花き農家
宮地 達哉
エリア|鹿児島県南九州市
出身地|鹿児島県鹿児島市
就農年|2004年
現在の経営状況(2024年10月現在)
収益
面積
38a
設備
ハウス3棟
ハウス1棟(レンタル)
雇用
妻の手伝い
元々花が好きで20歳から4年間ほど花屋で働いていました。自分でも育ててみたいと思っていたところ、川辺町(現南九州市)の農業公社がクルクマ栽培の研修生を募集しているのを知り応募しました。クルクマは蓮の花に似た形をしている夏の花です。昔は仏花として使われるのが主でしたが、僕が就農した頃から毎年いろんな品種が出て色も形も増えてきて、現在は結婚式や普段のフラワーアレンジメントなど多様なシーンで使われています。たくさんの花屋に並んでいるのですが、名前自体はあまり知られていないので、新聞やラジオなどの取材には積極的に出てアピールしています。
2年間の研修は月収が出る上に、栽培技術から農機の使い方、経営まで学べる手厚いものですごくありがたかったです。トラクターの乗り方もわかっていない初心者だったので助かりました。就農に備えて、研修期間中に土地探しや事業計画書作成にも取り組みました。もちろん計画通りにいかないことも多いのですが、相談できる環境が心強かったです。
一方で、苦労したのは住まい探しです。しばらくは古民家で暮らしていましたが、冬の冷え込みなどが厳しかったです。研修が終わる頃に結婚をして、その頃には研修生が優先的に住める賃貸が建てられたので、結婚後しばらくはそこで暮らしました。空き家自体は多いのですが環境が整った家はなかなかないので、就農する上での課題だと思います。
1年目
収益
面積
20a
設備
ハウス2棟(レンタル)
雇用
妻の手伝い
クルクマ栽培にはハウスが必須です。ハウスは補助事業を活用して建てたのですが、申請に1年くらいかかりました。なので、就農一年目は農業公社からハウスを貸りてクルクマ栽培を始めました。またトラクターなどの農機具も貸し出してもらいました。というのは、クルクマ栽培でトラクターを使うのは年に数日程度なので、レンタルで十分だからです。現在もトラクターはレンタルで対応しています。
正直なところ数値的な目標はあまり立てておらず、「いいクルクマを育てたい」「クルクマをもっと知ってもらいたい」と気持ちだけでした。
2年目
収益
面積
28a
設備
ハウス2棟
ハウス1棟(レンタル)
雇用
妻の手伝い
就農して一年半後にハウスが2棟完成しました。ハウス用の土地には水が引かれていなかったので、こちらにも補助事業を活用してボーリングで井戸を掘りました。27歳で就農したのでほとんど自己資金を持っていませんでしたが、ないならないで何とかなるものだなと思いました。もちろん資金があれば心にゆとりが持てるので、ある程度はあった方がいいかもしれません。
鹿児島は台風直撃地なので、自然環境には逆らえません。現在までにハウスが2回ほど壊れました。修理には保険で対応できますが、中の花が全部だめになってしまうのでそれには落ち込みますね。また台風や豪雨などによる物流の乱れで、苗や球根、資材の到着が遅れてバタバタすることもあります。
10年目
収益
面積
38a
設備
ハウス3棟
ハウス1棟(レンタル)
雇用
妻の手伝い
農業は台風などの自然に左右されるので「安定した」とは言い難いのですが、就農後10年目くらいから大分楽になった感覚があります。ハウスを建てるための借入金をすべて返し終わったからです。
時間を自由に使えるのがこの仕事の魅力です。水やりがあるので一日丸々休みを取るのは難しいですが、朝に仕事を終えた日は昼からゆっくりできます。子どもの学校行事も全部参加できていますし、昼間に趣味のサウナに行くなど、好きな過ごし方をしています。また、農閑期には趣味と仕事を兼ねて海外に花を見に行っています。タイのバンコクはクルクマ栽培が盛んで、新しい品種を作っている農場があるので、訪れて刺激を受けています。
クルクマを同じハウスで作っていたら病気が出やすくなっていたこともあり、2020年からはトルコキキョウの栽培も始めました。トルコキキョウは管理が大変で技術が要求されるのですが、そこが面白いですし、単価がクルクマの約3倍程度とぐっと高くなります。経費もかかりますがそれを差し引いても売上は約2倍になりました。トルコキキョウは冠婚葬祭すべてのシーンで活躍する上に、日持ちもするので、今後需要はなくならないはずです。クルクマも続けつつ、トルコキキョウに力を入れていく予定です。
コロナ禍で伸びた花の需要は、現在も横ばいで続いております。今後はいい花を育てるのはもちろんですが、若手の生産者を増やしていくことに何らかの形で携われたらと思います。
先輩就農者に聞いた、就農後のリアルをご紹介します!